コールドチェーン包装材料市場の医薬品需要による成長分析
コールドチェーン包装材料市場の現状と将来展望(2021-2028)
コールドチェーン包装材料市場 は、食品・医薬品の品質保持において極めて重要な役割を担っており、近年急速に注目を集めている分野です。グローバル市場規模は2020年に77億4,000万米ドルに達し、2021年から2028年にかけて年平均成長率(CAGR)7.0%で拡大を続け、2028年には131億7,000万米ドルに到達すると予測されています。特に欧州が2020年時点で市場全体の約31.91%を占める最大の地域市場であり、北米、特に米国市場も技術革新と確立された物流インフラを背景に力強い成長が見込まれています。米国単独では2032年までに約26億3,000万米ドル規模に達するとの長期予測も存在し、コールドチェーン分野における包装材料の戦略的重要性がますます高まっていることを示しています。
コールドチェーン包装材料とは何か
コールドチェーン包装材料とは、2℃〜8℃の冷蔵帯や-18℃以下の冷凍帯、あるいはそれ以下の超低温帯において、一定時間温度を維持するために設計された包装資材の総称です。従来の「保冷剤+発泡スチロール箱」という組み合わせから、現在では真空断熱パネル(VIP)、相変化材料(PCM)、高性能ポリウレタン発泡体、紙系断熱材、生分解性素材など、多様な選択肢が存在するようになりました。
主な材料区分としては以下のものが挙げられます:
- 発泡ポリスチレン(EPS) …… 現在も最も使用量が多い汎用素材
- ポリウレタン(PU) …… 高い断熱性能を持ち、特に高付加価値用途で採用増加
- 紙・板紙系断熱材 …… 環境対応ニーズに応じた次世代候補
- その他(真空断熱パネル、PCM内蔵素材、発泡ポリプロピレンなど)
市場を牽引する三大アプリケーション
現在の市場は大きく3つのアプリケーションに分類されます。
- 食品分野
最も大きな需要ボリュームを持つ分野で、全体の約55〜60%を占めると推定されています。 - 生鮮食品(肉・魚・野菜・果物)
- 冷凍食品
- 乳製品・アイスクリーム
- 寿司・弁当などの中食・惣菜
- 高級生鮮EC(特に日本・韓国・中国で急拡大)
- 医薬品・バイオ医薬品分野
成長率が最も高い分野であり、特に2020年以降は新型コロナワクチンの超低温輸送需要で一気に注目度が上昇しました。 - バイオ医薬品(抗体医薬、細胞治療薬、遺伝子治療薬)
- ワクチン(mRNAワクチン、従来型ワクチン)
- 血液製剤・検体輸送
- 臨床試験試料
- 工業用途
化学品、精密機器、半導体材料、バッテリー原料などの温度管理が必要な工業資材輸送。割合としてはまだ小さいものの、高単価であるため利益率が高い領域として各社が注力しています。
地域別動向
欧州(市場シェア1位)
環境規制が非常に厳しく、使い捨てプラスチック削減指令(SUP Directive)や循環経済行動計画の影響を受け、紙系断熱材やリサイクル素材、バイオベース素材へのシフトが最も進んでいます。ドイツ・フランス・北欧諸国を中心に、再利用可能な高性能コンテナ(RPC)やレンタル型保冷ボックスも急速に普及しています。
北米(特に米国)
食品通販・医薬品ECの爆発的な成長に加え、ラストワンマイル配送における温度管理ニーズが急増。Amazon Fresh、Walmart+、Instacartなどの巨大プラットフォームがコールドチェーン包装の仕様を事実上リードする形になっています。また、CRISPRや細胞治療薬など最先端バイオ医薬品の商用化が進むことで、-70℃〜-80℃対応の超低温包装需要も急拡大しています。
アジア太平洋地域
日本・韓国・中国・オーストラリア・インドなどが牽引。
日本では「医薬品の安定性試験ガイドライン」や「GDP(適正流通規範)」の厳格化、EC医薬品販売解禁などで高性能包装の需要が急増。中国では新型コロナ後のコールドチェーンインフラ投資が国家戦略レベルで行われており、2025年までに全国的なコールドチェーン網の完成を目指しています。
主な成長ドライバー
- 生鮮食品・冷凍食品のEC化の加速
- バイオ医薬品・細胞治療薬・mRNAワクチン市場の急拡大
- 食品ロス削減・フードセキュリティへの社会的関心の高まり
- ラストワンマイル配送における温度管理義務化の動き
- サステナビリティ規制の強化(特に欧州)
- 医薬品GDP基準のグローバルでの厳格化
課題と解決に向けた技術トレンド
一方で、以下のような課題も顕在化しています。
- 発泡スチロールの環境負荷問題
- 使い捨て包装のコストと廃棄物量の増大
- 超低温(-70℃以下)対応包装の価格の高さ
- 回収・再利用システムの未成熟
これらに対応する形で、次のような技術・ビジネスモデルが急速に進展しています。
- 紙系高断熱パネル(エアセル構造、紙+PCM複合など)
- リユース型高性能コンテナ(Viking、 va-Q-tec、 va-Q-proof、 Pelican BioThermalなど)
- 相変化材料(PCM)の高度化(有機・無機ハイブリッド、長時間維持型)
- 真空断熱材(VIP)のコストダウンと量産化
- デジタル温度モニタリング一体型包装(IoT・RFID・NFC搭載)
- バイオベース/生分解性断熱材の開発加速
今後の見通し(2025〜2030年)
多くの市場調査機関が一致して予測しているのは、「使い捨てEPS中心の時代は2025〜2027年頃をピークに終焉を迎え、リユース・紙系・高性能複合素材の時代に移行する」というシナリオです。特に医薬品分野では、再利用可能な高性能コンテナ+デジタル追跡の組み合わせが標準仕様になりつつあり、食品分野でもプレミアム生鮮ECや高級冷凍食品ブランドを中心に同様の動きが顕著になっています。
また、2030年に向けては「カーボンニュートラル対応包装」が最大のキーワードになると見られています。Scope3排出削減圧力が高まるなか、包装材料メーカーは単なる断熱性能だけでなく、ライフサイクル全体でのCO₂排出量削減を強く求められるようになるでしょう。
まとめ
コールドチェーン包装材料市場は、単なる「保冷箱」の市場から、食品の安全性・医薬品の有効性・環境負荷低減を同時に実現する戦略的資材市場へと急速に進化しています。2021年から2028年にかけて年平均7%成長が続くという予測は、決して楽観的すぎる数字ではなく、むしろ保守的な見方であるとすら感じられるほど、各産業の現場ではコールドチェーン包装に対する要求水準が日々高まっています。
今後10年間で最も大きな勝敗を分けるのは、「温度維持性能」「環境対応力」「コスト競争力」「デジタル追跡対応」の4要素をいかにバランスよく高められるか、そして「使い捨てから循環型モデルへの移行」をどれだけ迅速に、かつ現実的に実現できるかにかかっていると言えるでしょう。
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