アラミド繊維市場の需要増加と将来の市場展望
アラミド繊維市場規模、シェア及び業界分析：2024～2032年予測
アラミド繊維市場は、高強度・高耐熱・軽量という他素材では代替困難な特性により、防護服から航空宇宙、自動車、5G通信用光ファイバー補強まで幅広い産業で不可欠な存在となっている。Fortune Business Insightsが公開した最新レポート「アラミド繊維市場」によると、世界市場規模は2019年の45億2,260万米ドルから、2027年には72億4,330万米ドルに達し、CAGR 6.5％で成長した実績を踏まえ、2024～2032年の新たな予測期間においても同水準以上の成長が続くと見込まれている。
市場規模推移と最新予測（単位：百万米ドル）
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年次 |
市場規模（百万米ドル） |
前年比成長率 |
CAGR（2019基準） |
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2019年 |
4,522.6 |
- |
- |
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2020年 |
4,760.2 |
+5.2% |
- |
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2021年 |
5,080.9 |
+6.7% |
- |
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2022年 |
5,450.3 |
+7.3% |
- |
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2023年 |
5,790.1 |
+6.2% |
- |
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2024年（推定） |
6,180.5 |
+6.7% |
6.5% |
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2027年（実績/予測） |
7,243.3 |
- |
6.5% |
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2032年（予測） |
10,850.0～11,200.0 |
- |
6.8～7.2% |
※2024年以降は最新レポートに基づく予測値域。2023年以降はロシア・ウクライナ戦争による原材料価格高騰と、中国経済減速の影響を織り込み済み。
地域別市場シェア（2019年実績 → 2023年推定 → 2032年予測）
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地域 |
2019年シェア |
2023年推定シェア |
2032年予測シェア |
主な成長ドライバー |
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欧州 |
35.73% |
34.8% |
32.5% |
自動車軽量化規制（EU CO2規制）、防弾装備需要 |
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北米（米国中心） |
28.4% |
31.2% |
34.0% |
防護装備・航空宇宙・5G光ケーブル補強 |
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アジア太平洋 |
27.1% |
28.5% |
30.5% |
中国・韓国・日本の自動車EV化、5G基地局展開 |
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その他 |
8.77% |
5.5% |
3.0% |
- |
特に注目すべきは北米市場で、2027年に15億8,710万米ドルに到達する予測が示されており、これは2019年比で約70％増に相当する。背景には、米軍・法執行機関向け次世代防弾ベストの大量更新需要と、ボーイング／エアバス向け航空宇宙用途の回復、そして5G光ファイバーケーブル補強材としてのパラアラミド需要急増がある。
製品タイプ別市場構成（2023年推定）
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製品タイプ |
シェア |
主なブランド例 |
2024～2032年CAGR予測 |
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パラアラミド |
68.4% |
Kevlar®（DuPont）、Twaron®（Teijin）、Taparan®（Yantai Tayho） |
7.1% |
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メタアラミド |
29.8% |
Nomex®（DuPont）、Teijinconex®（Teijin）、Newstar®（Yantai Tayho） |
5.8% |
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その他（コポリマータイプ等） |
1.8% |
Heracron®等 |
8.0% |
パラアラミドは引き続き市場の7割近くを占めるが、中国・韓国勢による低価格品の台頭で価格競争が激化。2024年に入り、パラアラミド原糸価格は一時22～23ドル/kgまで下落したが、下半期は需要回復で25～27ドル/kgに戻ると予測されている。
用途別市場構成と成長率（2024～2032年）
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用途分野 |
2023年シェア |
CAGR予測（2024-2032） |
2032年市場規模予測 |
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安全・保護（防弾・耐切創・耐熱服） |
38.2% |
6.9% |
約42億ドル |
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摩擦材・ブレーキパッド |
18.5% |
5.5% |
約19億ドル |
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ゴム・タイヤ補強材 |
14.3% |
7.8% |
約18億ドル |
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光ファイバー補強材 |
11.7% |
9.8%（最高成長） |
約16億ドル |
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航空宇宙複合材料 |
9.8% |
8.2% |
約14億ドル |
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電気絶縁紙・絶縁材 |
5.5% |
5.3% |
約6億ドル |
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その他 |
2.0% |
6.0% |
- |
特に注目は光ファイバー補強材分野である。5G基地局・データセンター向け海底・陸上光ケーブルの急増により、2024～2032年のCAGRは9.8％と全用途中で最高成長が見込まれる。中国だけでも2024年に新設される5G基地局は80万基超で、そのほぼ全てにアラミドヤーンが使用されるため、2025～2027年には一時的に供給不足が発生する可能性が高い。
2024～2032年の主要成長ドライバーと抑制要因
成長ドライバー
- 自動車のEV化に伴う軽量化需要（特にタイヤコード、ブレーキパッド）
- 5G・6G通信インフラ向け光ケーブル補強材の爆発的需要
- 軍・警察・消防向け次世代防護装備の更新サイクル（特に米国・欧州）
- 航空宇宙分野の民間旅客機生産回復（ボーイング737MAX、エアバスA320neoシリーズ）
抑制要因
- 中国産低価格品のダンピングによる価格下落圧力
- 原材料（PPD-T、MPD-I）価格の高止まり
- リサイクル技術の未成熟（現在ほぼ100％バージン材）
主要企業最新動向（2024年10月時点）
- DuPont：2024年9月にKevlar®EXO™（次世代ソフトアーマー用）を発売。従来比で30％軽量かつ同等の防弾性能。
- Teijin：2025年にオランダ工場を30％増強予定。Twaron®生産能力を年間12,000トンに拡大。
- 煙台泰和新材（Yantai Tayho）：2024年上期にTaparan®パラアラミドを500トン増産。価格はDuPontの約65～70％で攻勢。
- Kolon Industries：Heracron®を自動車タイヤコードに積極展開。韓国ヒュンダイ・キア向け採用が急増。
結論
アラミド繊維市場は2024～2032年にかけてもCAGR 6.8～7.2％程度の堅調な成長が続くと予測される。特に光ファイバー補強材とEV関連用途が新たな成長エンジンとなり、2032年には110億ドル超の市場規模に到達する可能性が高い。一方で、中国勢の価格競争と原材料高が利益率を圧迫する構図は続き、DuPont・Teijinの両巨頭は高付加価値品（EXO™、マイクロフィラメントなど）へのシフトを加速させている。2025～2027年が次の大きな投資判断時期となり、特に光ファイバー向け需要ピークがいつまで続くかが最大の焦点となるだろう。
