アスファルト市場の需要動向と市場シェア分析

アスファルト市場の現状と将来展望：2024～2032年の市場規模・シェア・業界分析

アスファルトは、道路舗装、屋根防水、駐車場、レクリエーション施設など、私たちの生活に欠かせない基盤材料です。世界的なインフラ需要の拡大に伴い、アスファルト市場は着実に成長を続けています。Fortune Business Insightsが発表した最新レポート「アスファルト市場 Asphalt Market」によると、2019年の世界アスファルト市場規模は約2億2,200万米ドル（約2億2,200万USD）と推定され、2027年までに3億2,150万米ドルに達すると予測されています。この期間の年平均成長率（CAGR）は4.8％と見込まれています（※最新レポートでは予測期間が2024～2032年に更新されており、さらなる成長が期待されています）。

地域別市場シェア（2019年時点）

アジア太平洋地域が圧倒的なシェアを占めている背景には、中国、インド、東南アジア諸国における大規模な高速道路網整備や都市開発プロジェクトがあります。特に中国は「一帯一路」構想のもと、2020年代も年間数千km規模の高速道路建設を継続しており、アスファルト需要を強力に押し上げています。

製品別市場構成（2023年推計）

舗装用途が市場の8割近くを占めるのは当然の結果ですが、近年は気候変動対策として「クール舗装（反射型アスファルト）」や「リサイクルアスファルト（RAP：Reclaimed Asphalt Pavement）」の採用が世界的に拡大しており、環境対応型製品のシェアが急上昇しています。

米国アスファルト市場の特異性

米国では2027年までに市場規模が7,072万米ドルに達すると予測されています。これはBipartisan Infrastructure Law（2021年成立、総額1.2兆ドル）の影響が大きく、2022～2026年にかけて連邦政府が高速道路・橋梁整備に約3,050億ドルを投じる計画が背景にあります。州レベルでもカリフォルニア州、テキサス州、フロリダ州などが巨額の道路整備予算を計上しており、アスファルト需要は2024年以降も高い伸びが確実視されています。

成長ドライバーと抑制要因

主な成長ドライバー

1. 発展途上国における道路網整備の加速
2. 既存道路の老朽化対策（先進国中心）
3. 都市化による駐車場・レクリエーション施設需要増
4. 再生アスファルト（RAP）の普及によるコスト競争力向上
5. 耐久性・排水性に優れたポーラスアスファルトの採用拡大

主な抑制要因

1. 原油価格の変動（アスファルトは石油精製副産物）
2. 環境規制の強化（CO2排出量削減圧力）
3. コンクリート舗装との競争
4. 労働力不足（特に北米・欧州）

2024～2032年の市場予測（Fortune Business Insights最新版より抜粋・推定）

※CAGR 2024～2032年：約4.9～5.1％（環境対応型製品の普及で後半にかけてやや加速）

今後の注目トレンド

1. 温拌アスファルト（WMA）の爆発的普及
   従来の熱間アスファルト（HMA）に比べ製造温度を30～50℃低くできるため、CO2排出量を20～35％削減可能。欧州では既に全体の30％以上がWMAに移行しており、日本でも国土交通省が2025年度までに公共工事での使用率30％目標を掲げています。
2. プラスチック改質アスファルト
   廃プラスチック（ペットボトルやビニール袋）を5～10％混ぜ込むことで、耐流動性（わだち掘れ防止）が飛躍的に向上。インドでは2023年時点ですでに3万km以上の道路に採用されています。
3. 自己修復型アスファルト
   マイクロカプセルに修復剤を封入し、ひび割れが発生すると自動的に修復する技術。オランダ・デルフト工科大学が実用化段階にあり、2030年頃の本格普及が予想されています。
4. カーボンニュートラルへの挑戦
   シェル、トタルエナジーズ、BPなどの大手石油企業は、バイオベース・アスファルト（植物由来結合材）の商用化を急いでおり、2030年までに全製品の10～20％をバイオ由来に置き換える計画を発表しています。

結論

アスファルト市場は今後も、インフラ投資の拡大と環境対応技術の進化という二つの大きな流れに支えられ、堅調な成長を続けると予測されます。特にアジア太平洋地域と北米が牽引役となり、2032年には市場規模が4億6,000万米ドルを超える可能性が高い状況です。

一方で、原油価格の変動や厳しさを増す環境規制は無視できないリスク要因です。業界各社は、再生材の積極活用、温拌技術の導入、バイオアスファルトの開発を加速させることで、これらの課題を成長のチャンスに変えていくことが求められています。

今後10年間、アスファルトは単なる「黒い舗装材」ではなく、「持続可能な社会インフラを支えるスマートマテリアル」へと進化していくでしょう。

https://www.fortunebusinessinsights.com/jp/%E3%82%A2%E3%82%B9%E3%83%95%E3%82%A1%E3%83%AB%E3%83%88%E5%B8%82%E5%A0%B4-102998